2014/12/30

Leonidas Balafas / Apiliotis

Leonidas Balafas / Apiliotis
レオニダス・バラファスはギリシャのSSW、アテネ生まれの33歳。
ちなみにギリシャ文字に戻すとこうです。
Λεωνίδας Μπαλάφας / Απηλιώτης

2007年にデビュー、当時の彼がこれ。
これはこれは、何ともかわいらしくてイケメンだ。
この甘いルックスでポップなソングをシングしていたのだから、さぞ多くの女性ファンがいたことでしょう。
アイドル路線まっしぐらですね、分かります。

そして少し経つと…
色気が出てきた。
これはもはや確信犯レベルのイケメンである。
女性ファンたちは更に彼の虜となりメロメロだったことでしょう。
羨ましい…。

そんな彼ももう33歳。
大人の渋い色気を携えて、よりイケメンになっているはずだ。
どれどれ…
渋すぎである。
あんなに爽やかプリティーなイケイケ坊やが、こんなにもむさ苦しいグレイトフル・デッド級のおっさんに変わり果てている。
音楽とは残酷だ。

今回紹介する『Apiliotis』は彼の4作目で、全5作の内唯一のレンベーティカ作品となっている。
レンベーティカとはギリシャのブルーズと比喩され、労働階級者たちの苦悩を歌った大衆歌謡なのだが、その裏ではハシシ(大麻)や差別の問題で演奏を禁止された時代もあったり無かったり。
ブズーキ、ウード、バグラマー等による演奏は妖艶で生々しく、歌声はアンダーグラウンドに広がる悲しさと哀愁を持っているものが多い。

そんなレンベーティカを旅芸人?風来坊?ヒッピー?風に弾き語り、実に男臭い歌い口でより深く聴かせてくれます。
ある意味直球な伝統回帰作と言えますが、前作ではフォーキー&ブルージーなグリーク・ロックを展開。
Leonidas Balafas / As Rihni Kai Halazi
Λεωνίδας Μπαλάφας / Ας ρίχνει και χαλάζι

そんなロック的な解釈を通過したとはいえ、マナー通りの演奏と雰囲気には、彼なりのルーツ・リスペクトの強さを感じますね。
今後もトラディショナル路線のアルバムをリリースするのかと気になりますが、どうやら次回作ではグリーク・ロック路線へと戻っているらしく、もしかすると気まぐれに近い一時的な伝統回帰とも考えられます。
Leonidas Balafas / Aniforia
Λεωνίδας Μπαλάφας / Ανηφοριά

とはいえ、「ネオ・トラディショナル」「未来の民俗音楽」とも語られるであろう温故知新な伝統再解釈は期待以外の何ものでもありません。

全26曲、1時間半にも及ぶ大充実作、antart Productions久々の傑作として強くオススメできます。

2014/12/26

Aziza Brahim / Soutak

Aziza Brahim / Soutak
砂漠のブルース好きな僕ですが、これは見落としていました。
今年のはじめ頃にリリースされていたそうで、国内では7月に『あなたの声』の邦題でオルターポップさんからリリースされました。

このアジザ・ブラヒム、西サハラで生まれ、その後はアルジェリアの難民キャンプで育ち、キューバへの留学を経て、またもアルジェリアへ戻って音楽活動を行っているたくましいお方。
ジャケットではおばさんのように見えますが(失礼!)、実物はこれまたお美しい。
遠くを眺めて物思いにふける美女というのは良いものですね。
こういう真面目な表情もいいですが、微笑む顔は実にキュート!
おじさんたちなんかは尻子玉抜かれちゃうんじゃないですかね。
38歳ということで、ジャケットだけじゃなく年齢もおばさんです(これまた失礼!!)。

今作は3作目らしく、レーベルをGlitterbeatへと移籍。
なるほど、そのことだけで現地ではもとより、その界隈で人気が出ているのが分かりますね。
Glitterbeatと言えば、タミクレストやボンビーノ、最近話題のノーラ・ミント・セイマリなどの若き砂漠のブルース後継者たちを抱える美味い脂まみれのレーベルですから。

前作、前々作では縦ノリビートのブルース・ロックをバックに、ガッチリ歌っていたそうですが(じつは未聴です…)、今作では何とも分かりやすいアコースティック路線を決め込んでくれてます。
つま弾くギターがどこか悲しかったりしますが、彼女の乾いた声で訴えかけるかけるような歌い方にも哀愁を感じて止みません。
太くて滑らかなベースが目立ち目立たず絶妙で、生音を上手く際立たせてくれています。
ティナリウェンで言うところの『Tassili』に近いでしょうか、それよりも静かでシンプルですけどね。
プロデューサーにはタミクレストを手がけるクリス・エックマンを迎えたそうですが、この方のアコースティックな作品を他に知らないので、今後の仕事にどう影響されるかも注目です。

どうもこの手のジャンルは、アコースティック路線が渋くてつまらなくて個人的に最高なんですが、手出しするにはまだ勇気が必要だったりしますよね。
次回作では、ブルース・ロック系に戻らないかなとひっそり期待しています。

2014/12/22

2014年 年間ベストアルバム 11位〜

前回は2014年の個人的年間ベストアルバムを紹介しましたが、今回はそのランキングから惜しくも外れたアルバムたちを紹介。
ランキング外とはいえ、内容は言うまでも無く優秀で充実しております。
11位〜と謳ってはいますが、特に順位は付けていません。
また、各タイトルには簡単な私情付きの紹介コメントを書いています(タイトルによっては書いてないものもあります)。
もっと知りたいという方は自身で調べていただくか、どうしてもという方はご一報いただければ、ご希望のタイトルに更に私情を込めたコメントを加えて更新していきますのでどうぞよろしく。

今回紹介するタイトルは全て、エル・スール・レコーズで取り扱いのあるもの、あったものです。
貴店には敬服と、今年もありがとう、来年もよろしくの意を込めてここで宣伝させていただきます。


ちなみに本編である年間ベストアルバムはこちら。
2014年 年間ベストアルバム 1位〜5位
2014年 年間ベストアルバム 6位〜10位

Baba Zula / 34 Oto Sanayi
超個人的私情コメントになってしまうのだが、今年ババ・ズーラの二人が来日ツアーを行った際に、東京公演のライブに本人たちから招待を受けた。
彼らから連絡が来たのがライブ前日で、当日はどうしても外せない仕事が夜遅くまであったため、「ごめん!明日は仕事が夜遅くまであるんだ!それはそうと日本はどうだい!?素晴らしい国だろう!ハッピーだね!」と雑な断り方をしてしまった。
二人ともごめんよ。次回の来日ツアーのときは絶対に行くよ。

Seun Kuti & Egypt 80 / A Long Way To The Beginning
シェウン・クティもヒップホップに接近中。しかし、こんなジャケットでは現地じゃ売れないだろうに(より世界を意識?)。

Lobi Traoré / Bamako Nights ~ Live At Bar Bozo 1995 ~
ロビ・トラオレの未発表ライブ音源!ファン垂涎の一枚!

BKO Quintet / Bamako Today
ベカオ・カンテット。近年稀に見る完成度の高めなマリ・ミュージック。

Zebda / Comme Des Cherokees

Orchestre National De Barbès / Dame de Cœur
4年ぶりのスタジオ・アルバム。テーマは「女性」今後のライブはどうなる!?

Tal National / Kaani
ニジェールの今を表現するバンド。キレのあるローファイ&ヘヴィなアフリカン・ポップスがまさかの一発録り。素晴らしい。

Klô Pelgag / L'alchimie Des Monstres
カナダ、ケベック出身のシンガーソングライター、クロ・ペルガグ。クラシカルでちょっとアヴァンギャルド。不思議な世界観。

HK & Les Déserteurs / Les Déserteurs
在仏マグレブ左派のミュージシャンHK。自己のマイノリティ性や共感を歌い上げたソロ・プロジェクト・アルバム。豪華ゲスト陣を従え、シャンソンをアルジェリアン・シャアビで痛烈カヴァー。かっこいい!

V.A. / Maghreb Lyon 1972-1998
全てがカセット起こし!マグレブ音楽、幻の音源集!

Maria Rodés / Maria Canta Copla

Moussu T e lei Jovents / Opérette
マッシリア・サウンド・システムの別働隊がオペレット・マルセイエーズの名曲たちを情緒豊かにカヴァー!渋い!

Black Bazar / Round 2

Talisco / Run
フランスのインディー系ミュージシャン、タリスコのファースト・アルバム。まるで大作映画のような、幻想的でダイナミックなサウンドスケープ。

Alsarah & The Nubatones / Silt
NY在住のスーダン出身ヌビア系ミュージシャン、アルサラー。初のバンド体制アルバムでヌビア音楽を親しみやすく堂々と歌い上げる。

Anansy Cissé / Mali Overdrive

Mascarimirì / TAM!
南イタリアのバンド、マスカリミリ。ピツィカ、タランテッラをパンキッシュに解釈、かつクロスオーヴァーさせて歌い上げた充実アルバム。

 
V.A. / African Memories
Asiakwa Brass Band / Asiakwa Brass Band
エル・スール・レコーズの大奮闘作!詳しくはそれぞれのジャケット画像からのリンクでよろしくしちゃいます!すいません!

 
Naoji / Naoji Kills.
Naoji / Naoji Killed.
音楽を超えた!?そのモノマネに意味はあるのか!?Naoji Killシリーズ!スペイシー、アヴァンギャルド、クラシック!?2014年、大問題作!ジャケット画像をクリックすると…っ!?

2014/12/18

2014年 年間ベストアルバム 1位〜5位

早速だが、2014年の年間ベストアルバムを決める。
初回のブログで一年の総決算、一応年末だし。
でもこういう特集がなんだかんだ言って、雑誌やテレビで一番多くの読者、視聴者を得ているのは事実なのだ。

まあ、個人的に毎年やっていることでもあるし、いちいちツイッターでランキングツイートをするのも面倒くさいから、ブログでまとめてやってしまえ!ということ(むしろその方法が正解。なんで今までやらなかったのか…)。

ちなみに2013年の年間ベストアルバムはエル・スール・レコーズのHP内で公開して頂いてるので、興味のある方はエル・スール・レコーズのHP内で探し当ててください。
ページのリンクは貼らないのでご了承(諸々事情が…)。

では、本題。
選考期間は、2013年の12月から2014年の今日までにリリースされたアルバムから。
でも、期間はある程度曖昧でもいいと思うし、輸入盤に関してもそこまで縛る必要も無いから、大体の期間ということで。
今回は1位~5位までを紹介。

1. Bebson De La Rue + Trionyx / Groupe Électrogène
今年の新人賞(新人か?)と言おうか。
キンシャサのシンガー、ラッパーのベブソン・ドゥ・ラ・リュの2013年1stアルバム。
90年代から活動していて1stというのもちょっと疑わしいが、その長い活動期間で培ったであろう野生的でエネルギッシュな声が、キンシャサのストリート感を伝えるには必要十分で大いに適している。
ジュピテール・バゴンジもそうだったが、この生存本能丸出しな声を持つ者がストリートの兄貴になれるのだろうか。
基本は田舎的でルンバなギターと、おおらかでくぐもったビートで続くのだが、ときに美しく母性に満ちた女声コーラスが、演奏に乗るベブソンを更に引き立てるので、終始一定のテンションを落とすことなく、かつ「ゆるく」聴き続けることができる。
決して自分の内だけで消化しないコンゴレーズ・マナーがジュピテールより庶民的に思えるし、アコースティックでゆるめなファンクとベブソンの放つ声が共存するかのようにマッチしたことで、結果ストリートの再現に繋がっているのだろう。かっこいい!!

2Tinariwen / Emmaar
砂漠のブルース愛好家にとって避けては通れないビッグネーム。
今作ではマリでのレコーディングを断念して、北米西海岸の砂漠まで大移動したとか。
なんでもマリの紛争でメンバーの一人が誘拐されて、イブラヒムが「こんなところで音楽ムリ!」となったそう。
それでも絶対砂漠にこだわるあたりがドラマチックでかっこいい…。
砂漠のブルースって、音が遠くまで果てしなく響いて行く感じが好きなんだけど、彼らは真打ちたる存在なので、ますます空間的な音作りが緻密になってきますね。
アルバムの詳細がアナウンスされたときに、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのギタリスト、ジョシュ・クリングホッファーが参加していると聞いて少し不安になった。
彼って技術的には言うこと無いんだけど、まだ若さに任せた勢いで切り抜ける部分が自身のバンドで見られるから、ティナリウェンのルーズさと合わないんじゃないかと思っていた。
でも、そういう心配は大体裏切られるもので、あれ?ジョシュどこ?っていうレベルまで溶け込んでるじゃないですか。
とはいえ、違う地域の砂でも受け入れる広い砂漠のようなバンドでありますし、演奏のジャム的要素が外部を受け入れやすくしている部分もありますね。
音楽的な水準が低くなることは絶対に無いし、ハンドクラッピングの一つも逃さずグルーヴに変えるあたりが王者の貫禄と言えるのだろう。

3.  Hassan Hakmoun / Unity
12年ぶりの新作だろうか。
グナワの先駆者として世界的に有名になった彼だが、12年というブランク期間に何をしていたかというと、日本人女性と結婚し、特に何をすること無く自由奔放に生活していたとか。
プライベートに関しては聞いた話でしかないから何とも言えないが…。
数年前からNYで着々とレコーディングしていた本作が遂に日の目を浴びたということで、2014年最大の作品として軒並み高い評価を受けたのだが、いやはや、これは本当に衝撃的なアルバムである。
まず聴こえてくるのが、超ド級な低音ゲンブリのリフ。
グナワを通り超え、ハード・ロックやファンクをも手中に抑え込んだとでも言うべきか、ハッサン流のスモーキーでヘヴィなグナワが、ブランク期間を無駄と思わせない進化と答えなのだ。
ハッサンの声にも注目しなくてはならない。
もはや人間を超えている。まるで猛獣のような声。
この声を含めて彼のグナワは成り立っており、本来グナワを構成する要素である呪術的なグルーヴも、彼の声を目として渦巻いている。
なぜ今作を1位にしなかったのかというと、個人的な話、1993年作のHassan Hakmoun & Zahar / Tranceのほうが実は好きなのだ。
年間ベストとは関係無いが、スタイリッシュでキレ味のある過去の作品もオススメしたい。

4. Angélique Kidjo / Eve
ミリアム・マケバではない、キジョだ。
見てくださいよこのジャケット。おしゃれ〜。
資◯堂のTSUB◯KI的な。
ジャケットが表現するように、美しくて強いアフリカ女性のバイタリティを、キジョが張りのある声とダイナミックでエレガントに作り込まれた演奏を従えて歌い上げるのだ。
アフロビート、レゲエ、ルンバ、スークース等々を見事にポップスとして生まれ変わらせている。
何度も言うようだが、演奏のレベルが妙に高い。
数曲ほどフィールド・レコーディングを行っているようで、かつこれほどのレベルとは…。
どうやらプロデューサーのパトリック・ジレット、なかなかのお方なのだろう。
聴いていると何かに包まれている感覚に陥り、あぁ、これがキジョの母性というか懐の深さというか、女性の強さみたいなものを心に直接突きつけられるよう。
今作、ドクター・ジョンやヴァンパイア・ウィークエンドのロスタム・バトマングリがゲストで参加していますが、キジョ本人は自分の母親もゲストで参加していることのほうを強くアピールしているようです。

5. Massilia Sound System / Massilia
今年で結成30周年、その記念というべきアルバム。
おっさん3人がマイクを持って声高らかに「立ち上がれ!」「マルセイユの誇りを!」と、まあ簡単に言うと戦おうということだ。混ざり合った血として。
攻撃的なリリックを攻撃的なサウンドに乗せて、ときに畳み掛けるように、聴衆に訴えかける姿は心打たれるというものです。
もとよりこのバンドはレゲエ・バンドなのですが、別働隊たちはパンクをやったりブルース・ロックをしたりと様々なので、今作においては、彼らの国フランスらしく「人種の坩堝」ならぬ「ジャンルの坩堝」と表現しておこう。
ヘヴィでありながら戦闘態勢バリバリなビートと3人のマイクリレーは、かっこいい!の一言。
彼らは国を愛し、国民を愛し、自身を奮い立たせ、聴くものを動かす力を持っている。
根本にある土着的なリズムがマルセイユの人々とワールド・ミュージックファンの心を掴んで離さないのでしょう。
昨年、別働隊であるムッスー・テ&レイ・ジューヴェンの来日ライブに行ったのだが、その時のおっさんたちのかっこよさ、渋さ、もう全てがパーフェクト!

2014年 年間ベストアルバム 6位〜10位

今回は6位~10位を紹介。

選考期間は、2013年の12月から2014年の今日までにリリースされたアルバムから。
でも、期間はある程度曖昧でもいいと思うし、輸入盤に関してもそこまで縛る必要も無いから、大体の期間ということで。

6. Valérie Louri / Edith Lefel Tribute
みんなゴリラーマンって知ってる?
このヴァレリー・ルーリ、女性に対して大変失礼だが、ゴリラーマンにそっくりなのだ。
ルックスの話は置いといて、今作、エディット・ルフェールのトリビュート作品である。
後半はオリジナルが数曲あるのだが、確かに彼女の歌い口、エディット・ルフェールのそれに近い。
爽やかなアコースティック、バッグを彩るストリングスの美しさと、それらに負けない力強い歌声がアルバムいっぱいに詰め込まれている。
パーカッションが他のズークよりもかなり自由に動いていて実に上手い。
新世代のズーク、フレンチカリブとして、これからの躍進にも期待できる。
ゴリラーマンの話に戻るのだが、どうやら彼女、欧州版ライオンキングに出演して一躍有名になったとか。
野性的ということか?きっとダンスも上手いのだろう。

7. V.A. / African Gems
良い仕事をしたものだ。
ヒュー・トレイシーと聞けばある程度の人がフィールド・レコーディングの何ちゃらと答えるのだが、その意思を継いだのがイギリス人のマイケル・ベアードで、今作は彼が1960〜70年代にアフリカ各地で敢行したフィールド・レコーディングの再編復刻盤。
ステレオ録音ということで、よりリアリティになったのかは知らないが、これがなかなかの問題作である。
録音した地区によってバラバラな音を聴かせてくれるのだが、一環して言えるとすれば、どれも全てスペイシーだ。
宇宙と交信しているのか?それとも宇宙になりたいのか?
サン・ラ的と言われればそうなのだが、儀式や葬儀の音楽なのに宇宙を連想させるところとか、サン・ラや神とかとはまた違う繋がりが、彼らの音楽と結びついているのではないだろうかと思ってしまう。
人形の木彫りホーン、指穴の無いホルンの呪術的な音色。
マリンバ、ザイロフォン等によるポリリズム。
アンビエントとして聴くだけでは勿体無かろうか?

8. King Ayisoba / Wicked Leaders
このアルバムに関しては僕が語るより、国内配給をしているエル・スール・レコーズのページを見てもらったほうが一億倍分かるのだが、何でもかんでもリンクを貼ってよろしくするのもどうかと思うので、一応書かせてもらう。
ヒップ・ライフ(ヒップ・ホップ+ハイライフ)と言われる音楽なのだが、どうやらその音楽性とはまた違うアプローチをしてきたのが今作のようで、そのほとんどが弾き語りに近いアイソバの個人芸なのだ。しかも吠えてる。
彼が弾いているのはコロゴという2弦の楽器で、彼はこれを繊細巧みに弾き、それを支える管楽器と打楽器たちが土着的で土臭い、かつブルージーなグルーヴを生み出している。
なるほど、「ネオ・トラディショナル」「未来の民俗音楽」その二つの言葉は決して間違いではなく、むしろ僕はその言葉に賛同する。
それにしてもアイソバのダミ声、パンキッシュでメッセージ性に溢れている。
ハッサン・ハクムーンの、猛獣のように絶対的な声とは違うが、ストレートで感情をあらわにしている感じがとても良い。

9. UBK / Ouzo Bazooka
このアルバムをベストに入れるべきか迷ったが、個人的にここ数年で一番ツボなミュージシャンなのだ。
ブーン・パンのギタリスト、ウリ・ブラウネル・キンロトのソロ・プロジェクトで、巷では中東のブラック・キーズ、ホワイト・ストライプスと言われている。
まあ、その通りなのだ。
ディストーション・ギターを荒々しく弾き倒し、ブルース、ガレージ・ロックを中東のエッセンスで体現したあたり、かっこいいね。
今年の夏にブーン・パンはフジロックに出演したのだが、合わせて来日ツアーも行っており、その一つを観に行った。
ウリの魅力と言えば、そのルックスから滲み出るキリスト感(?)!
髪と髭はまるでキリストのように伸ばされ放置され、細身の身体には汗臭そうなタンクトップ一枚、頭を振り乱しながらジャズマスターを弾き散らかす様に僕はやられた。
ちなみに彼はテンションが上がるとテーブルの上に乗ってギターを弾くクセがあり、どうやらお行儀が悪いようだ。
そんなウリと少し話をしたのだが、どうやら来年か再来年にでもまた来日したいそう。
握手した手は大きく柔らかかった。良い思い出だ。

10. Christine & The Queens / Chaleur Humaine
実はこのアルバム、まだ手元に届いていない。
いや、現在カナダから発送中なので年が明ける前には届く予定なのだ。
ストロマエの前座をつとめ、またストロマエとは違う角度、違うアプローチでフランスのエレ・ポップを次のレベルへと押し上げる存在。になりえるかもしれない。
女性ではあるが、どうやら心は中性的なようで、美しくもどこか悲しいサウンドに乗せられた彼女の詩は青春、愛の渇望、人の温かさ。
また、クリスティーヌという名前は、芸名といよりはデヴィッド・ボウイのジギー・スターダストに近いもので、自らが作り出したもう一人の自分だとか。
歌い口は優しいが、悲しみと悩みに満ちあふれており、ドリーム・ポップにも接近しそうなエレ・ポップ・サウンドが、その謎めいた雰囲気を一層引き立たせている。
ヒップ・ホップ寄りなストロマエとは一線をひいた、陰のあるポップス・サウンドが心に直接響くのだ。